have fun53

              
今宵、マタドールを

しゃべり過ぎのマジックはアルコールで


夜の9時をまわった

「じゃあ、明日 楽しみだわ」

「ほーい」
女がカウンターを離れた

カウンターには空になったグラスホッパーのグラスと男が一人残った
 
「オイラにもう一杯おくれ」

「いいんですか?寝坊しちゃいますよ」

マタドールのお代りが滑り込んできた

「大丈夫 絶対遅れない方法があるんだ」

「えっ・・・・・まさか・・・ 今から?」

「へへへ いい勘してるじゃん」

「でも飲んでらっしゃるじゃないですか 車はダメでしょ」

「ああ わかってる  合法的手段で行くのさ」

「・・・・?」

「実は今日はそこから来たんだ そこに車を置いてさ」

「帰りはそれでいいとしても・・・」

「そこだろ? どうやってこれからそこへだ」

「ええ 何かマジックでも?」
 
その男は、今しがた席を立った女性と 
明日の朝 奥多摩でデートの約束をしたのだ
 
冷たい水に足をさらしての暑気払い
その後、ヤマメの塩焼きで一杯やり、陣馬の湯を浴びる
夏の始めの約束が秋の入り口まで繰り延べになっていたらしい
夏休みが終わったばかりのそこは、親子連れがいない分静かなはずだ
 
「そだな今からもう一飲みして夜行バスに乗るんだ」

「はあ・・・」

「それで八王子まで行く 問題はそこからだ」

「奥多摩なら 八王子からだと結構離れてますよね」

「ああ そうだな」

「ねえ いい加減教えて下さいよ からくりを」

「そうだな」
男はマタドールを飲みミネラルウォーターをせがんだ



「実はな 明日の午前と午後八王子で歌謡ショーがある 前座を含めると有名無名5人くらいのご一行様だ そして今頃山梨で夜の部が  うん 今頃だ 一番盛り上がっているわけよ」

「はあ」

「ふふふ そんで とりを務めた歌手はな そのあと地元の顔役とさらにひと盛り上がりっていうスケジュールでさ 最後はタクシーで八王子のホテルへ向かうという筋書きなのさ」

「へえ」

「そのタクシーはどうやって帰ると思う」

「あっ」

「そう 帰るんだぜ もらった高速代は自分の懐に入れて 最短距離を走るのさ 」

「最短ですか?」

「陣馬山の山越えだ 夜間でも大型トレーラーが商隊をつくる20号線など走りゃあしないのさ  越えたその麓にオイラのベッドが待っているっちゅう話よ どだ?」

「でもそのタクシーをどうやって・・・・」

「うん そうだな そこがこのマジックの奥儀だ 」
一気にミネラルウォターを飲み干した

「ほ~ら メールがきた」
男はその、メールを見やった


「おいっ 今何時 」

「え~ 11時をちょっとまわってますけど」

「電車は 最終の電車は!」

「ん~ 11:28分ですかね たしか そのあたり」

「お勘定!」

「どうしたんです? 夜行バスでしょ」

「バカタレ とりを務める歌手が暑気あたりで 早々に八王子へ向かったんだと しかも電車で ダチのタクシーに乗るはずだったんだ」

「ああああ そういうことだっ」

「いいから 勘定!」

「あらら 間に合うといいですね 終電  はいありがとうございました」
その男は階段を駆け上っていった
 
バーテンダーは

「遅まきながら ご武運を」
と言って

桶から、いい感じの氷を二つ
『カチッ カチッ』と鳴らし



「明日は待望の雨ですってよ いやあ 人生っちゃあ なかなかどうして」
そういってニヤリと笑った






確かにニヤリと笑った



            
【神棚・神具】火打石 小 2.5号

楽天ブログ カクテル スコッチ ウイスキー こと バー BAR 
楽天ブログ カクテル スコッチ ウイスキー こと バー BAR 


コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

いち乃そら

Author:いち乃そら
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
フリーエリア
カテゴリ別記事一覧
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる