have fun57 肉球の約束

            
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グラス(肉球の約束)



そのグラスはキャビネットの右端に
右端の一番奥に
置かれている

一緒に置かれているグラス達はどれもバーテンダーお気に入りの一点モノだ
興に乗った時に戯れに使われる事があったが、
奥のグラスは、バーテンダーのものになってから一度もキスを許されることはなかった
ただ店を開けている限りは、他のグラス同様、世話だけはきちんとされていた


 
ある夏の夜
ふと 客がひいた

そして間もなく一人の客が入って来た

どうやらバーには不慣れなようで、少しキョロキョロしながら腰を降ろした
そしてすぐに、タバコに火を渡した
 
バーテンダーがおしぼりをもって近づいたとき煙が目に入った
客は目頭を押さえて、煙を追い出した
 
もし、そうでなかったら、バーテンダーのおしぼりを渡す手が一瞬止まってしまった事に気がついただろう

この時バーテンダーは『バーテンダー』としての何かを感じたのだ

「いらっしゃいませ お飲み物はお決まりですか」
おしぼりが手から手へ渡った

「いや でも 今思い出したんだけど・・・・カクテルはつくってもらえますか?」

「はい勿論 もし存じ上げなければ調べようもありますので、材料さえ揃うようでしたらお作りします」
 
「う~ん 実は名前も良く思い出せないんだ」

「何か思い出でもおありなんですか」

「うん そうなんだ ずいぶんと前なんだけど・・・パ なんとか パコなんとかだったかなあ 犬や猫の肉球がなんとかって聞いたかもしれない・・・・」
 
この時バーテンダーは確信した
ほんの少し足が震えた
胸の中ををツンと突かれた
 
「パパゲーナというのがありますけど・・・」

「パパゲーナですか ん~ じゃあそれをお願いします」

「かしこまりました」

「あっ もう一つ思い出した そうか」
バーテンダーは用意をしながら微笑んだ
 
「昔ね そう入社した年だこの街で新人研修を受けたんだ その時に飲んでる」

「ずいぶんと前ですか」

「そうだねえ 10年くらい前かなあ 地方から、本社のあるこの街に集まって、合宿みたい感じでさ その後は皆それぞれの会社に戻って行ったんだ 実は今年の春から本社勤務になってここに移動になったんだ でも今日まで思い出さなかったよ」

その客は、夏の休暇が終わり、今さっき帰って来たところだと付け加えた
 
「お待たせしました パパゲーナです」

「ありがと    うん 美味しい」
客は一口飲んで言った
 
二本目のタバコに火を渡した時

「思い出のカクテルでしたかしら」

「う~ん 美味しかったんだけど ずいぶんと記憶が曖昧だからなあ」
 
バーテンダーはほほ笑むと、キャビネットの奥からグラスを出した
カクテルを一つ作りサーブした


「パタパタといいます」

「へぇ~ これも パ がつくんですね」

「ええ」

「あっ これだ これです たぶん間違いない」
バーテンダーの指先がほんの少し震えた

「それはよろしゅうございました 見つかりましたのね」
そう言うと洗いものを始めた
 
「あっ」
その客は改めて、そのバーテンダーの顔を見た
何かをなぞり、確かめるように
 
「その研修の最終日に飲みに行ったんですよ 2、3軒いったかなあ 結構酔っぱらって そうだ 最後にバーに入ったんです 駅の近くだったかなあ そこで出してもらったのがこの パ・・」

「パタパタです」

「そう 『俺達新人でぇ~す』と言ったら、その けっこう可愛いバーテンダーも『私も新人でぇ~す これは私のオリ・・・』・・・・・・・・オリジナル第1号って・・・・・・・」
バーテンダーは姿勢を正した

「お帰りなさいませ お待ちしておりました」

「あーーーーーーっ」

「あなたは言ったのよ そう、かなり酔ってらしたけど、『僕はこのグラスでもう一回 もう一回このカクテルを飲みに来るから忘れないで』って、そのグラスは前のお店を辞める時に、お願いしてもらっておいたんです」

「でも・・・・よく」

「バーテンダーには、忘れてはいけないお約束もありますの でも同じタバコを吸っていて頂けなかったら 気がつくのがもっと遅れたかもしれません」

「じゃ? はじめから?」

「お話をお聞きするまでは、なんとなくでしたけど」
ニッコリ笑って ちょっと舌を出した

「僕は パタパタを飲んでも半信半疑だった・・・」

「おぼえていてくださったのね」
バーテンダーは唇の内側をほんのちょっと噛みしめた
 
 
 
 
秋の終わりに
もう一つの約束も果たされた






『へぇ 私まだ九州に行ったことないです 桜島もテレビでしか見た事ないです 行ってみたいなあ』
『じゃあ 今度来た時、僕の事を忘れてなければ 連れていってやるよ』
『わーーい まってまーす  忘れませんからねっ!』



            
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