have fun99

シニアグラスとハンカチーフ(ミモザ)


「あのぉ~ 申し訳ないんですけどぉ・・・」

『あっ 邪魔してたか』



古本屋
といっても
ファミリーレストラン風の古本屋

本当に欲しい物と出会う事もない

カバーの写真とセットで気に入ったものを何冊か持っているが
片岡義男の名前も見なくなってから久しい
それでもブラブラしてみたくなる

休みの日、買い物帰りの寄り道の一風景




なんて言ってらんない
「あっ すみません  どぞ」
体を大きく移動した


「あっ いえ  あのぉ~ すぐお返ししますので ちょっとだけメガネを貸していただけませんか」

「はっ? ああ どぞ いいですよ」

ついさっき100均で買ったばかりだから汚れてもいないはずだ
ポケットの底に沈んでいたメガネを差し出した
いつもなら そこには使い慣れたメガネが入っている

「ほんと ごめんなさい  この棚だけ見たらすぐお返しします 」
大慌てで棚の本を検索している


「いいですよ ちょっと一回りしてきます 何かを探してるわけじゃないので」
そう言ってゆっくり回遊をきめこんだ

「すみません」と小さく背中で聞いた



ん?何故メガネを持っていると・・・
なんどかオイラをここで見かけているのかな
それならわかるが・・・・



2,3分もたったか
メガネが自分から帰って来た
黄色のチーフに拭いてもらいながら

「気がついたら忘れちゃって それでダイソーに行ったんですけど・・・・・ごついのしかないでしょ いくらなんでも男の人じゃないんだからと あきらめたの」
メガネを差し出しながら彼女が言った
まだ、メガネなんか必要なさそうにも見える
チーフは小さな黄色の花柄模様だった

「そして透視能力でオイラのポッケの中を見たら  ちゅうことですね  大丈夫 黙ってます 誰にもいいませんから 安心して」
指に人差し指をあてながら言ってあげた


「ダイソーでぇ 私の一人前の人がぁ  買ったのを偶然見ちゃったの 誰にもいっちゃいけないことだと思って黙っていたんだけどぉ 胸が苦しくて黙っているのに耐えられなくなったの・・・  えへっ」

「なあ~るほど 秘密を守るって 大変だよね 秘密を知ってしまった同志で珈琲ブレイクしない?」

「えっ」

「わははは 老眼鏡の貸し借りをする中だもん  ナンパ  そう ナンパ  ほら向かいのコンビニで 珈琲が僕らを待っているよ」

今度は彼女が笑った
「OK メガネのお礼に 私がナンパしちゃう  」

彼女は さっさと歩きだした
『う~ん 悪くない』
背筋の伸びた綺麗な歩き方だった

彼女がちらりと振り向いたので、一瞬バレたかと思った


結局、お互い知り合いと遭遇する危険性を避けて、おのおの買って、店の横にある灰皿に集合した


「あったんですか」
「何が?」
「はっ?  いや  探しもの」
「ないの たぶんないんだろうなあ って でも探してみたいの」
「なんとなく わかります 私も赤い背表紙を見ると ちょっと気になる作者がいます」

「おんなじ・・・」
「ん?」
「カバーが赤いの カバーの写真もいいのよ」
「ん?」
「ん?」
「最初は か」
「ん? あっあたしも あたしも  か よ」
「最後が お」
「うん」

煙がぶつかり合って、ものすごいスピードで舞い上がっていく

「ここで やめましょうか」
「そうね やめましょう  同じだったら そこで関心が薄れるわよね」
「ひょっとしたら 同じかもっていうところで 」
「ええ そうね ひょっとした 同じなのかも」


「今度添い寝しながら、読み聞かせごっごしましょうか?」
「まあ 素敵 でも1回かんだら 顔に洗濯バサミつけるんだったら お願いしたいわ」
「つらの皮は十分固いから だ い じょう ぶ」

タバコと珈琲が幕を引きだした
「じゃ 今度は 読み聞かせのシーツの上でね」
「じゃあ 練習しておきます 読みと 顔面」

ウエストのあたりで、小さく手を振って彼女が流れた
『いい歩き方だ』



彼女は振り返らず、腰のあたりでもう一度手を振った

バックポケットから ミモザのチーフがちょっとだけ見えていた





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