have fun92

            
オーバン ダブルマチュアード 1998 43% 700ml OBAN DOUBLE MATURED



    ソルティードッグからドッグノーズへ



『コッコッ』とヒールの音が近づいて来る


うつむいたまま聞いていた
ここ数時間、何度となく聞いているものとは違うような気がした
 
ヒールの持ち主の体の揺れが波動として感じられるくらい近づいたところでやっと顔を上げてみる気になった


「あのぉ~」
笑顔の中に不安があった
 
「やあ ちょっと待った」
「すごいことなさるのね そんなふうには見えないけど・・・」
「ちょっとした気まぐれさ いや原始の叫びかも」
「?」
「棍棒の持ち合わせがなかったので、待ってるより方法がなかったんだ」
 

「二度目よね お店にみえたの」
「よく覚えてるね」
「前も同じようにアイスコーヒーのLをオーダーして、小さなノートにずっと書き物をなさっていたでしょ?あれは鉛筆?文字は読み取れなかったけど太い線だけは覚えていたの」
「その1ページを今日あなたに渡した」
「そして、ん~6時間そこに座っているわけね」
「そういう事になるか」


 
「目的は?」
「一緒に飲みたい」
「ふ~ん それだけ?」
「ボーダーハートもあるが高望みはしていないさ」
「いいわ 知り合いのバーがあるの そこでよろしければね」
「待った甲斐があった」
西陽をバックにしても彼女の笑顔は遜色なく輝いていた
 
 




 
一枚のメモを渡して客は出て行った

スタッフの女性はそれを見て、エプロンのポケットにねじ込んだ

もう姿のない入口をチラリと見て何事もなかったようにテーブルを拭いた
そして、そのことはタイムカードを押すまで彼女の口からもポケットからも出ることはなかった


『仕事が終わったら飲みましょう 待ってます』


そのメモは持ち主を変えてから6時間後、小さなブラウンのショルダーバッグに引越しした


 
店を出た彼女は、いつも向かう駅舎の階段に目をやり注視した

そこから注意深くロータリーの景色を観察した

西陽がきつい
正面のデパートの右手にバスストップがありベンチがあった
今そこで西陽を一身に浴びてうなだれている男を確認した
駅舎に登る階段をもう一度見た
 
彼女は持ち前の素敵な姿勢を崩さず、男のいる方に向かって歩き出した
 
 
 
 
「ソルティードッグを」
「塩分の補給かしら」
彼女は笑いながら、ボーモアをチェイサーつきでオーダーした

「やっぱり」
「えっ」

「なんとなくそんな気がしていたんだ 勿論イメージとしてね だから誘ってみた これが正直なところだ」
「私けっして強くはないのよ これ一杯で十分なの 女友達といっしょだとこんな飲み方はできないのだけれど・・・本当はこういう飲み方が 何故かスキなのよ」
 
「ドッグノーズを」
「まあ 犬好き?」
「飼い主のご用が済むまで熱いアスファルトの上で辛抱強く待つ彼ら達に乾杯」
彼女はほぼ彼女自身で笑った

「何かご褒美が必要かしら・・・」
「塩分補給が済んだので、今度は美味しい獲物を探すために鼻をつかうのさ」
「あら はやくもボーダーハートかしら」
「いや」
と言って

「松前漬け それとアードベッグを」
「美味しいわよ それ なんでもむこうの知り合いから送ってもらっているのですって」
「ちょっと似合わないメニューだなと さっきから思っていたんだ そういうものは美味しいはずだとも・・・」

「あたりよ 今度私もドッグノーズ飲んでみようかしら アードベッグお好き?」
「ん~ オーバンの次くらいに」
「私の次?」

「・・・・・・・・・・」

「そこは すかさず否定するものよ」
 
笑い声がからみあった





            
老舗だからこそ出せる奥深い味わい。北海道伝統の松前漬け!松前漬(瓶詰) 120g
 


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