have fun83

           
遙かなる時空の中で3 with 十六夜記 愛蔵版 プレミアムBOX : コーエー


タワーリシチ・カクテル

「そう?わからなかった・・・彼・・・何て言ったっけ? そうケンだ。この辺りで3・4軒お客がいるので2・3日泊まると言ってたな。帰りにもう一度寄ってもらおう。・・・まだ起きている時間だな」
妻のタワーリシチを一口かすめとり、メガネを探した。

携帯電話をかけるためだ。



『ねぇ・・・今の曲・・・音というか響きが変わっていたわよ。決して不快というわ
けではないけど・・・・』
そんな妻の一言に反応したのだった。
 
 
 
本日定休日
運悪く、『当たり』というハズレくじを引いてしまった魅惑担当の女性スタッフと、かのバーテンダーが店にいた
 
ピアノの入れ替えだ
今や先代となったピアノは緊張を緩められ、いくつかのパーツが固定された
鍵盤蓋が閉められた

輸送用のカバーが掛けられようとしたとき、89番目の鍵盤が動いた

蓄えられていた小さなエネルギーが二つこぼれ落ちた

一つはカバー閉じ込められてしまったが、もう一つはフロアーに落ちて弾んだ
 
ものすごい勢いで壁にぶつかっては、またあちらの壁へ飛んでいった

その音の行方を、かのバーテンダーは微笑ましく、あるいは名残り惜しそうに眺めていた

やがて壁にぶら下がっていた音片たちがシンクロを始めた
 
 
『オン ザッ!』
男たちの掛け声で新しいピアノの固定が始まった
『オン ザッ!』の掛け声が幾度か続き定まった
 
調律師らしき若者が、鍵盤蓋をそっと開け、ポイントになる鍵盤をいくつか鳴らしながら

「よし、そんなにズレてないや。今夜には十分間に合うよ」

他の男たちは先代のピアノを運び出しにかかった

「そう、よかったわ。早めに仕上げて一曲聞かせてよ。明日はあの子の嫁ぎ先へ行ってくれるのよね」
「嫁ぎ先か・・・うん、3・4日あっち方面の仕事が入るんで、ちょうど良かったのさ。ちゃんとお輿入れしてきますとも」

ケンと呼ばれる調律師は人なつっこそうに笑いながら言った
 
 
行き先を求める音玉が二代目の89番鍵盤に吸い込まれ、新しい音玉が飛び出した
ケンは本人も気づかないほどの反応をしめしたが、それが言葉に置き換えられること
はなかった
 
 
先代のピアノは資材用エレベーターの前で、エレベーターの到着を待っている
エレベーターが止まった
ドアが開き始める
 
かのバーテンダーが印を結んだ
そしてドアをわずかに開けた
二代目からこぼれ出た音玉が光を帯びて先代を追った
 
先代の乗ったエレベーターのドアがゆっくり閉まった
音玉は間に合わない

すると、エレベータのドアがまた開きあわてて一人降りた

エレベーター脇の床に足受けを置き忘れていたのだ

あらためてドアが閉まり始める
 
追いかけてきた音玉は狭い通路をうねるように進み、最後の直線までたどり着いた

フロアーのバーテンダーが
『ふんっ』と念を送った
輝く音玉は垂直な一本の線となって
エレベーターのドアの隙間をすり抜け先代に吸い込まれていった
 
『やれやれ』
かのバーテンダーは奥へ入っていった
 
 
 
その日の夜、二代目は店のすべての物に
そう、すべての『物達』に受け入れられた
 
 
3日目の夜、ピアノ好きの常連客がやってきてピアノの前に座った
スタッフにかるくウインクして、薬指と小指を折って「3」を見せた
3曲目が始まるころ、一杯頼むという意味だ
スタッフはあらぬ方向を見ながらも、見落とすことはない
かるく敬礼を返した
 
 
2曲目が終わって魅惑担当のバーテンダーがタワーリシチを運んだ
「ねぇ 今の曲なんだか響きが変わっていたんだけど・・・何かテク?なの?」
「?いや、何もしてないが・・・今日の最後にもう一度弾いてみよう」
タワーリシチを一口やり、笑いながら手で彼女を追い払った
 
カウンターの中に戻った彼女はおすそ分けのタワーリシチを飲み干した
 
 
 
 
 
時空を越えて新旧のピアノがハーモニーを奏でた瞬間、店のすべての『物達』がそれ
に酔った
ある夜のプロローグ
 
 
 
追記1
それぞれの空間に居合わせた人間で、最も「のん兵衛」な者をアンテナにしたふしが
ある
(by かのバーテンダー)
追記2
アンテナの役割を果たした二人に『物達』からプレゼントがあった
一人にはお気に入りのボトルが一本
一人には階段が1段
8×11=88+1の能力をつかむチャンスだ
きっと二人とも気がつかない・・・・・・・だろう
慈しみに対して『物達』は人間以上に律儀なのだ
(by エポック)



              
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